ビジョン

「物事に対する先入観に疑問を投げかけ、あらゆる体験を調べ上げる。」  

 
このような考察を通じて、私たちは「幸せを得たい。苦しみから逃れたい」という生きとし生けるものに共通する根源的な願いに気づくようになります。そして、生きとし生けるものに具わる仏性をあらわにすることが人生の目的となり、 自他の利益のために覚りの道を歩むことが人生の最優先事項となっていく。マンガラ・シュリ・ブティでは、この理念に基づき、「生きとし生けるものが真の幸せを得て、苦しみから解放される支えとなること」を活動目的とします。
 

ロンチェン・ニンティクとケン・コン・チョリンの法脈

私たちが属する金剛乗のロンチェン・ニンティクとケン・コン・チョ・スムの系譜では伝統的に、解脱の旅は師弟関係を通じて示されます。私たちのサンガもこれまでズィガー・コントゥル・リンポチェの緊密な指導の下、一歩ずつ発展してきました。導師(ラマ)の智慧と弟子の切望が触れ合う、言い換えると、弟子の誠実な想いやインスピレーションに応える形で、師がさらなる教えや指導を授けるという有機的な形でサンガと個人は成長してきました。このような相互理解を基盤にすることで、道を歩むための、高潔で明瞭な信頼の置ける環境を築くことができると信じます。
 

学習、修行、奉仕

マンガラ・シュリ・ブティ・サンガは、リトリート(隠遁修行)で伝授されるゾクチェンの教えを頂点とする道を歩みます。その準備として、様々な「学習」コースを修習しながら、ロジョン(心の訓練)や一連の「修行」階梯を実践していくことになります。また、サンガの活動に参加する「奉仕」も、個人の資質を高める重要な要素です。
これらの「学習」「修行」「奉仕」により育まれるカルチャーを通じて、弟子は利己心を減らし、利他の人間へと成長することができます。 
私たちのサンガに活動理念があるとすれば、「生まれながらに具わる覚りの本性につながる、その支えになること」です。
 

日本のビジョン

「日本仏教の再興」 

新しいアプローチ

日本では近年、教育水準の高まりとともに、知的水準も向上しました。そのため、信心のみで仏教を普及させる従来のアプローチとは異なる手法が求められているように思えます。仏教では、信心は知性よりも優れた徳性だと言われます。しかし、知能の向上にともない、従来のように信心のみでは、疑心が深まるばかりで、確信を持って道を歩むことが難しくなっています。また、知的な心には、非論理的な信仰や宗教は危険なもの、劣った、古くさいものとして映ります。しかし、本来、仏教は極めて論理的な教えです。恐らく、日本ではこれまで、できる限り多くの人の救いとなるように、論理的な教えはさておかれ、信心を中心に教えが広められたのだと思われます。一方、仏教の論理的な側面は、読解力を身につけた僧侶や高い階級の一部の人たちの間で学ばれてきました。

 しかし、時代は変わり、現在は一般の人も、当時の僧侶と同等の語学力や読解力を身に付けており、これまで一部の人に限定されていた教えを、皆が学べる状況になりました。その際、過去の形でそのまま紹介するのでなく、現在の状況に合わせてわかりやすく説き明かす必要もあります。また、概念だけの理解にとどめず、自ら実践し、体験に根差してその恩恵を理解することで、信を深めていくことが極めて重要となります。このようなプロセスを通ることで、確信に満ちた信心を養うことができるでしょう。

 
日本の課題

西洋の物質主義が押し寄せたことで、多くの日本人が自国の文化やルーツを見失いかけています。恐らく戦前生まれの人には、このルーツが根付いていたのではないでしょうか。しかし、現在、その多くは高齢となり、あと何年もすれば日本の文化やルーツを体現する人がこの世から去ります。一方、そのルーツの多くは若い世代に受け継がれていません。彼らは、西洋の物質主義に追従し、利己的な傾向を強めています。しかし、長年かけて培われた日本人の美徳は、正しい理性に裏付けられています。それは「利己心を減らし、利他心を養うことで、結果的に、自他ともに幸せになれる」という正しい因果関係に根差したものなのです。若い世代は恐らく、ある一定期間、ハリウッド映画で見られるような一時的な幸せを追い求めるかもしれません。しかし、その結果として受ける苦しみから、必ず、再度、道を探し始めるはずです。ですが、その時には残念ながら、文化やルーツを保持している人がほとんどいなくなっている可能性があります。そうなると、人々の心は、何が正しくて、何が誤りかが分からなくなり、大きな混乱の闇に包まれます。

これは何も日本だけの話ではありません。ユダヤ教などでも、同じように物質主義から文化喪失の危機に直面しています。チベットも同じ状況です。中国によるチベット侵攻以来、チベット内でも、またインドに亡命してきたチベット人社会においても、特に若い世代の多くがそれまで受け継がれてきた自国の文化やルーツを軽視し、西洋の物質主義に追従し始めています。このように世界中で独自の文化やルーツを失う危機に直面しているのです。
しかし、興味深い点は、西洋の科学者や心理学者などの知識人と呼ばれる人たちが、逆に仏教の智慧に目を向け始めていることです。彼らは研究を進めるうちに、仏教の教えが実は自分の分野にも役立つことに気づき始めています。彼らのような知性に長けた人たちが、仏教の論理性や哲学に意義を見出しています。一方、東洋の知識人の多くはいまだ西洋のスタイルを追い掛ける傾向にあります。とても興味深い現象です。この点から見れば、東洋の人たちも、いつかは自分たちのルーツに目を向け始めると思われます。


日本での仏教再興プロセス

日本人は、謙虚さ、忍耐、礼儀正しさ、思いやりなど、仏教的な徳性を多く身につけており、寺院参拝や右遶、五体投地、供養など、仏教的慣習も既に存在します。これらの慣習や徳性は修行の大きな支えとなる一方、単なる道徳的な行為として行うのなら、あまり力となりません。また、以前と違い、これらの行為に対する信も失われています。そのため、これらの文化や慣習の本当の意味や利益について正しく知る必要があります。単にきまりや道徳として身につけるのではなく、何が幸せをもたらす正しい行いで、何が苦しみをもたらす誤った行いかを論理的に理解することで、信を深め、心を正しい方向に導いていく、このような心の取り組み方を身に付ける必要があります。タバコやドラッグに中毒の人の場合も、後に肺ガンになるなど、その行為の結果に確信を持てなければ、ついついそれらに手が伸びてしまいます。同じように自分の心に対しても、何が有益で、何が有害かを学び、そのことに納得し、確信を得られない限り、苦しみをもたらす習慣的な行為になすすべなく流されます。このように今の時代に求められるのは、教えを聞き、心から納得し、知性を高めることで、心を正しい方向へ導くことなのです。そして、結果として幸せや心の平穏を体験できれば、その後は、その充足感から、自然と正しい行為に向かい、少しずつ心の闇を晴らしていけるでしょう。

また、仏法の真髄は、単なる慣習や文化の中にはありません。それは、瞑想の中で知性と智慧を高め、心に直接関わることで覚られるものです。茶道や華道、武道など日本には素晴らしい文化が存在しますが、これらの道の祖師達は皆、座禅にも精通していたはずです。今の時代も同じように、単に形骸化した慣習や文化だけを伝承するのでなく、その背後に潜む智慧を共に受け継いでいかねばなりません。そうすれば、文化と仏法は互いに支え合うものとなり、この混乱した社会の中でも、人々はより健全で有意義な人生を送れるようになると思います。
 
ズィガー・コントゥル・リンポチェへのインタビュー(2001年11月25日)の抄訳
 

サンガ

「仏法に調和した文化を築く」 

サンガとは、仏教理念に根ざした共同体のことを指し、その始まりは釈尊の時代に遡ります。サンガの目的は、仏法に調和した文化を築くことにあります。このような文化を育むには、教えを聞き、熟考することで、私たちの習慣的な思い込みや、考え方、行動を見つめ直し、それらを真理に即したものへと変容させていかねばなりません。サンガの一員になることは、仏法を共に学び、他者と関わりながら道の理解を深める大きな支えとなります。
15年以上にわたって、私たち日本のサンガは、仏法を学び、修行し、導師・法脈との結縁を深めながら、奉仕や組織を支える活動に参加することによって、まるで染料に布を浸すように、少しずつ仏教文化を吸収してきました。

コントゥル・リンポチェはこのアプローチに、特に重点を置かれています。なぜなら喜びや困難を伴う他者との共同作業は、道の進み具合を測る目安となるだけでなく、修行者としての成長に欠かせない要素だからです。

リンポチェは、「サンガにおける共同作業とは、目的地を同じとする者たちが1隻の船に乗り込み、共に輪廻の大海を航海するようなものだ」と述べています。
 

MSBJについて

一般社団法人マンガラ・シュリ・ブティ・ジャパンについて

マンガラ・シュリ・ブティ・ジャパン(MSBJ)は、ズィガー・コントゥル・リンポチェの指導の下、ニンマ派ロンチェン・ニンティクの系譜を学ぶサンガ(僧伽:仏の道を共に学ぶ集合体)です。
リンポチェが初来日された2001年4月に、米国 Mangala Shri Bhutiの日本支部(任意団体)として設立されました。その後、毎年リンポチェをお迎えし、伝統的な仏典を題材にしながら、継続して法話会を開催しています。
また法話を聞いて終わるのではなく、日常生活でその教えを実践し、個人の体験に基づいて理解を深められるよう毎月、勉強会と座禅会を開催しています。
2015年11月2日、サンガの公益性をより高め、その活動を将来に継承していくために一般社団法人化しました。
 
法人概要は こちら   沿革は こちら   定款は こちら

 

活動拠点

タシ・ガチル

Tashi Gachil

京都東山、善気山法然院の隣に位置する、緑に囲まれた静かな和風建築の山荘。MSBJのメイン・センターとして、年に一度のリンポチェをお迎えした法話会、月一の勉強会や座禅会を開催しています。
タシ・ガチル、「Auspicious Coil of Joy」は「吉祥なる歓喜の円環」を意味します。

 

座禅会場

 

タシ・チョリン

Tashi Choling

南伊豆の海近くの高台に位置する、自然豊かな山荘。敷地内の能舞台にて、座禅会やドゥルプチュ(集中的な供養行)を行っています。
タシ・チョリン、「Auspicious Place of Dharma」は、吉祥なる仏法の地を意味します。

 

座禅会場